音楽を絵にする企画作品(小説:軍隊演舞曲〜黒と白の魂) [軍隊演舞曲〜黒と白の魂]

俺はゲーム好きの少年だ。いつもゲームセンターで遊んでふけっている。

どんなゲームも何度もクリアした。自分に出来ないゲームなどない。

ただ、どんなにクリアしても面白くなかった・・・達成感がないのだ!

みんなは俺のことをゲームの天才とか名人とか言うけども面白くない。。

だってこんなのニセモノじゃん。。所詮プログラムなんだよ。こんなのが

上手くても何の価値もありゃしない全部偽者じゃないか。


世の中のゲームってこんなモンなのか?


拓斗は夜の繁華街を放浪しながら世の中の変化のなさに失望感を感じていた。

とある裏道に「軍隊円舞曲」と書かれた謎の看板が立っている。

拓斗「なんだこれは?バーか何か?」


ドアを開けてみるといきなり管弦楽のような音楽が流れていた。

円舞曲風には見えるがどことなく重厚で重たい感じがする・・勇ましい感じ!?

部屋の中もどことなくアンティークで薄暗くぼや〜っとした白熱灯のようなオレンジの光がさす。


奥の方から謎の中年が出てきた「いらっしゃい・・」。

拓斗「あの・・・あなたは!?」

??「私?ここのオーナーで渡辺という者だ」

拓斗「この曲って・・一体」

渡辺「これはゲームの臨場感を出すためのものだ。景気ずけだな」

拓斗「ゲーム?ここでゲームをやるのですか?」

渡辺「そう、ここでは勇気を試すゲームをやる酒場なんだ・・・」

拓斗「へぇ・・どんなもんです?それ?」

渡辺「白と黒の玉に自分の命をあずけるゲームだ。これは勇気と信頼が必要だ。ないやつは死ぬ」

拓斗「え??死ぬ?」


いきなりわけのわからないことを言うおっさんに俺は(やっちまった〜来るとこ間違えたな・・)と思った。

しかし、そのゲームには興味があった。世の中のゲームに飽きてしまった俺にとって、

そのゲームが自分を満たすものかどうか気になっていたのだ。そこで聞いてみた。


拓斗「おじさん、このゲームのやり方おしえて」


渡辺は一瞬止まった。おそらくこの男にとってこのような返答があることなど考えもしなかったのだと思う。

だが・・すぐにニヤリと不敵な笑みを浮かべながらこう応える。


渡辺「まず、目の前にこの黒い玉と白い玉を並べてずっと見つめてみろ・・」


俺はその不気味な玉をゆっくりと見つめた。オレンジ色の光と不気味なオーケストラの不協和音が

俺の脳髄に染み付いてゆく・・・そうするとその黒い玉の中から何かが出てきた・・



何か迷彩服を着た謎の人物が俺を刺し殺そうとしている・・

これは事実なのか?幻か?わからない?とにかくその男は俺を俺を・・

「うわぁぁぁぁぁ!」その叫びさえ真実なのかわからない・・

その瞬間、いきなり戦車が店に突っ込んできた!俺は何とかそれを避けたが、

こんどはさっきの迷彩服の男が俺を刺し殺そうとしてくるのだ。
「やめてくれぇぇぇ」


そうだ、あのおっさんはどこへ行ったのか?いない・・それどころかこのバーは何なんだ。

軍隊演舞曲ってこの状況がそうなのか?めちゃくちゃだ!ふざけるな!

迷彩服の男は数が増えてきてどんどん行進してくるではないか?

状況はめまぐるしくかわってゆく・・・

拓斗はもう自分が何なのかわけがわからなくなってくる。これがゲームなのか?

というかこの人達は敵なのか味方なのかもわからない・・無差別なのか・・


俺は・・俺は・・自分がどんどんわけがわかんなくなってくる・・その瞬間、自分は手にナイフを持っていた。

そして、その迷彩服の男を刺し殺した。

ただどんどん迷彩服の男は増えてくる。「ぎぃやああああああ!」。

拓斗は半狂乱状態になり男をただただ殺し続けた。

そうだこれはリアルの戦争アクションなんだ・・拓斗は確信する。

そして念じると手元には爆弾が・・これを戦車に投げつけた。


ドーン!


戦車は跡形も無く砕け散る・・ゲームクリアだ。中から人が出てきたようだが、落ちていた銃で撃ち殺した。

悶えて死んでゆく人間を見ると優越感を感じる。


「そこに何があるんだ?」

拓斗「はっ!」その声の方向へ拓斗は振り向く。そこには迷彩服を着た人間が立っていた。良く見るとおっさんだった。

拓斗「そうか、あんたがこのゲームの黒幕だったんだな!あんたを倒したらクリアだ!」


そういうと少年は男目掛けて銃を乱射した。ダダダダダダダダダン。ばたり・・男は倒れた・・

やった!


渡辺「人は現実と空想の狭間で生きている」


拓斗「な・・」男は背後にいた。。そして静かにそう語った。

渡辺「空想に身をおく限り人はこの人生というゲームをクリアすることは出来ない。

誰もが空想に身をおき優越感を抱くことを願望しているがそれは真実ではない。

真実を理解出来ない者は信頼を得ることは出来ない」


拓斗「ばかやろう、くだらない真実を信じるくらいなら、空想の世界に身をおいた方が良いんだよ!

俺はこの世界じゃないと生きられないんだ!」


拓斗はゲームが好きであったが、ゲームばかりしていたのはそういうわけでもない。

現実世界のやり取りに飽きていたのだ。毎日繰り返される日常、時事・・・どれも大したこともないし

いつもと同じような事実のように思える。そんな世界がくだらなく感じていたのだ。

その結果、ゲームという世界に身をおいていたのである。


「うわあああああああ!」拓斗は半狂乱状態になって男に襲い掛かった・・・今度はナイフが命中した。

男はバタリと倒れた。

拓斗「ははははは!ざまあみろこのオヤジ・・・えらそうなことを言いやがって」

渡辺「空想に身をおく限り、空想はおろか現実さえ支配することは適わない」

拓斗「なんなんだよ!あんたは!ここから出せ!」


拓斗は暴れた。そして壊れた・・・壊れて壊れて不協和音とともに自分の胸をそのナイフで刺した・・

その瞬間、拓斗の目の前はまっくらになる・・





ここはどこなんだ・・俺は誰なんだ・・そもそも今は何?

何もない・・ただあの音だけはゆっくりとゆっくりと俺の耳の中に入ってくるのだ。

行進のようで演舞のようでよくわからないあの曲が・・・時にはやさしさを感じる。

ゆっくりゆっくりと心を前進してみよう・・・

すると俺の手のひらには白い玉があった・・


拓斗「ここにある白い玉は表・・つまり真実・・これを信頼しなければいけない・・

そして黒い玉は裏、空想・・・もう一つの世界、世の中はこの二面性で成り立っている。

真実を認めないで黒い部分に依存すると心は黒く歪んでゆく、

だからといって白い世界、真実ばかりに身をおきつづけると良いわけではない

真実の中にも黒い世界、嘘や空想が存在するが、これらが悪いわけでもない。

2つの玉をうまく分け合い信頼し、命を預ける・・そうすると真の真実が見えてくるんだ・・・」


拓斗は静かにそうつぶやいた。その瞬間、拓斗を包むその白い空間は一気にその視野を延ばし

広範囲につつみこんだ。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





渡辺「ゲームクリアだ・・おめでとう」

拓斗「え?ここは酒場?」

いつのまにか元の酒場に戻っていた。今まで見ていたのは何だったのか?幻覚?

ただ、目の前には例の玉が2つ転がっていた。


渡辺「人は誰しも2面性を持っている。人だけでないこの世のどんなものも表と裏がある。

ただ裏だからといって悪いものではない。人の為につく嘘だってあるし、セールスだって偽りの笑顔がある。

これが人を幸せにすることもあるし、そうでないこともある。

問題はそれを受け入れる勇気と事実を信頼する心だと思う。君はそれを理解した。

このゲームをクリア出来ない人間は世の中に沢山いる。

間違うと人生というゲームにおいて死ぬことになるんだ」



=================================




エピローグ・・


俺は学校帰りにゲームセンターによって相変わらずゲームを楽しんでいる。

ただ、あの日を境にゲームというものの楽しみ方が違ってきたように思う。

あのときはただやみくもに敵を倒して終わりだったが、

今はこのゲームの世界観や背景、人物像など考えるようになった。

そうすればこのプログラムで作られた空想の人物像に何かしら人間味や愛着を感じるようになるんだ。

この敵はどういういきさつで理由で人をさらったのか?なんてね。

味方だけじゃなくて敵も助けたくなるんだよ・・なんていってたらこっちがやられちゃたんだ。

ゲーセンの常連から「お前最近調子悪いんじゃないか〜?」なんて言われることがあるけど

俺はゲームの本当の楽しみ方を覚えたから全然不満じゃないんだ。

心の中の白い玉と黒い玉をうまく手のひらで転がしながら俺は世の中を渡り歩いて行こう!


End・・・・









すらいぬさんから私のデータ「軍隊演舞曲」を参考にして頂いた。絵から私がさらに参照して小説にしたものです。
しかしながら私は「軍隊演舞曲」を軍隊の行進を演舞のような華やかな祭典をイメージして作成したものの
すらいぬさんからはさらに奥深いイラストを頂いたことに驚いております。
このイラストは深いのでただただ感想を述べるだけでは味気ないので、すらいぬさんのコメントも参考にしながら
私なりの「軍隊演舞曲」を連想してみたのであります(^^;
そこにまた違ったイメージが浮かんできて新しい世界観が広がってゆく・・これが創作の醍醐味なのではないでしょうか?
この企画、実は私自身も忘れかけてたんで、これを頂いたときには冷や水をかけられたような感じでした(^^;
いや〜正直頂けるとか思っておりませんでしたんで(汗
この白と黒の玉というキーワードをどういう風に連想するのかというのがポイントであって
そもそも私のこのデータからこの2人の男のやり取りと玉に命をかけたゲームという連想が浮かばれるというのが
すらいぬさんの連想力と発想力のたまものだと思います。
それを私なりに解釈するには小説を書くしかないと思い立ったわけです。
ただ文章力もイマイチな私にとってこの作品(絵)に対する世界観を
すべて出し切るというのは難しいので私なりの世界観を考えてみようということに相成ったのです。
白と黒を世の中の二面性に例えてみました。
世の中の陰と陽は常に存在していてそれらを受け入れる許容や 信頼を試すゲームという発想になったわけです。
ここでゲームという題材に巷で問題化されているゲーム脳のテーマを組み合わせ、
ゲームに潜んでいる 心の闇に打ち勝つという設定を考えました。
私自身、ここまで深く考えさせられるようなすばらしい作品(絵)だったと思います。
ゆい氏がおっしゃってましたが、あえて白黒にしたことによって世界観をより連想しやすくなったと思います。
すらいぬ氏の作品はカラーよりも単色の方が世界観を感じやすいという不思議な魅力を持った作品です。

出会い掲示板と日常談話サイト「IKAKAN」
音楽作品をイラストにする企画案内